西濃遠征の最後は、久しぶりに陣屋跡を訪問。
西高木家陣屋跡。西、北、東の3家からなる交代寄合美濃衆の陣屋跡です。
陣屋跡ではありますが、石垣に長屋門も残っており、遺構の残りは素晴らしい。
さらに近くに東、北家の現存建築や遺構も見られて、一粒で三度おいしいような訪問となりました。
お城:西高木家陣屋跡 岐阜県大垣市
HP:国指定史跡 西高木家陣屋跡(にしたかぎけじんやあと) | 大垣市公式ホームページ/水の都おおがき
訪問日:2022年8月
概要
美濃南部の土豪であった高木家が、関ケ原の戦いの功により4300石を与えられて入った際の陣屋跡です。
高木家は西、北、東の3家からなり、交代寄合美濃衆として大名と同等の格式を許されました。
領地は美濃、伊勢、近江三国が接する要衝であり、上方の非常事態に備えるとともに、江戸時代を通じて木曽三川の治水業務も担いました。
陣屋は牧田川の河岸段丘上に、伊勢街道に面する形で築かれており、段丘崖に築かれた石垣や埋門、移築された長屋門が今も残ります。
訪問記
西高木家陣屋跡
大垣城からその足で、大垣市の上石津地区へ。
大垣市と言っても大垣駅前とはだいぶ雰囲気の違う、山地に挟まれた長閑な地域です。
そもそも平成の大合併で生まれた飛び地ですしね。
まずは西高木家陣屋跡に建つ、上石津郷土資料館に立ち寄り予備知識を入手します。
名前の通り、高木家だけではなく、上石津地区の歴史全般を紹介されている訳ですが、たった100円の入館料とは思えない充実の展示内容でした。
入口にも掲げられている島津の退き口もこのあたり。
その関連の展示もなかなか興味深いものでした。もっと時間を取っておけばよかった。
もちろん西高木家陣屋跡のパンフレットも入手して、散策へ
といっても、今いる郷土資料館がすでに上屋敷跡なのでいきなり散策開始です。
郷土資料館の正面の駐車場が下屋敷跡。この辺りは少し厳しい。
もう一度、郷土資料館側へ。
回り込んで横から眺めると、多良中学校跡の石碑があります。
郷土資料館ができる前、上屋敷の跡地には中学校が建っていました。
廃校にもノスタルジーを掻き立てられるところはありますが、お目当ての方にはもっと惹かれます。右端にちょこっと写るアレですね。
長屋門
右端にちょっと写っていたアレです。
もともとは下屋敷御門だったものを移築したもの。
近くの看板の絵図をみても当時の場所とは違うのがよく分かります。
現在地は上屋敷のど真ん中で長屋門を置くような場所ではありませんね笑
もう一つ今の測量図も。
伊勢街道を中心に、西、北、東高木家の位置関係が分かりやすい。
そして石高の違いの通り、筆頭であった西高木家陣屋跡の規模感もよく分かります。
改めて現地を見てまわりましょう。長屋門の奥には主屋が残りますが、非公開。
当然ドアの向こうを見えませんし、
脇から見えるアレだと思いますがこれ以上は見えません。
明治期に新築された主屋で、一部には天保年間の建物が残るとのこと。
長屋門左手を見ていきます。と言っても、この方面は草原と森
この先に高木家の墓所があるとのことですが、夏の森に入る勇気は出ませんでした。
西高木家陣屋跡は河岸段丘の高台に建てられています。
眼下には伊勢街道。良い立地ということがよく分かる眺めです。
そんな伊勢街道につながる道路を降りていきます。
早速見えるのが石垣。
立派な石垣は高く積まれていて
何段も重なっており非常に立派。
実際には今とは逆にここを登って陣屋に向かったと思うと、正面にそびえる石垣には圧倒されたでしょうね。
私も最初、圧倒されました。
この右手にも石垣は残り、埋門がおかれていました。
奥が塞がれていますが、当時はここを通って中へ入っていたのでしょうか。
夏場にも関わらず完璧に草が刈られていたので、感謝しつつ少し近づいてみました。
埋門から通路の景色
石垣の規模感が一層よく分かります。
逆に見ると埋門がいい感じで。
もう一度道路を下りきって、伊勢街道から北面を見上げます。
高い所にも石垣。陣屋の敷地にはかなりの石垣が使われていたことが分かります。
伊勢街道まで下りてきましたので、お隣の陣屋へ向かいましょう。
東高木家陣屋跡・北高木家陣屋跡
伊勢街道を横切って、お隣の東高木家陣屋跡へ
こちらは遺構少なめですが、立派な土蔵が残ります。
文政年間の建物と伝えられる蔵は、修復を経て今も綺麗な海鼠壁を残しています。
足元の砂利道は伊勢街道。奥へ進むと緩やかに曲がりながら下っていきます。
石垣に挟まれた坂道がなんとも言えない良い雰囲気。
右手の石垣も東高木家陣屋跡のもの。
古さと綺麗さが備わっていて良いです。
反対側は、北高木家陣屋跡のもの。
北高木家陣屋跡は三家の中でも最も保存状態が悪いとされ、遺構はほぼこれだけ。
石垣も手前の方はきれいすぎる気もしますが、それでもしっかりと3つの陣屋があったことを伝えてくれています。
この先に下りたくなる興味は感じつつも、ボーボーの草に心を折られて折り返します。
振り返ると先ほどの蔵を下から見上げる構図でした。
これ、なかなか当時に近い画なのでは。
他にも伊勢街道沿いには、江戸時代の宝暦治水の際に薩摩藩から送られたとされる日向松が残っていたり
小学校跡があったりと興味深いものが目白押し。いくらでも散策できてしまいます。
最後は、バス停越しの西高木家陣屋の石垣と、
陣屋跡から見下ろした伊勢街道でお別れです。
コンパクトながら良いところでした。
感想
満足度 4/5
陣屋が三軒並ぶ珍しさ。いずれも遺構を残す珍しさ。圧倒される折り重なる石垣。
長屋門も含めて非常に興味深いところでした。
この日3か所目かつ遠征の疲れがあってもいくらでも回ってしまいました。
陣屋跡はそこまで広くはありませんが、資料館含めてしっかり時間を取って回りたいところです。
アクセス
西高木家陣屋跡